◯長崎区(市)の上水道布設に関する当時の新聞記事


      長崎区に上水道を布設することになった経緯を知るため、当時、長崎で発行されていた鎮西日報の記事を見て行きたいと思います。

     今後も記事を少しずつ増やしていきたいと思います。



     【明治19年10月3日付け鎮西日報】

       ●水道改良の建議

         一昨夜西濱町清洋亭に於て長崎商工会の委員会議了の際、商工会員瓜生震氏より商工会に対し、長崎区内水道改良の計画を

        建議せられたり。その建議案は左の如くにて、これには内外専門家の実測も概略整い居る由なるが、同会にては建議に対し、

        一ニ討議の末事業重大にわたるをもって、不日ことさらに商工会委員の総会を開き審議すべきことに議決し、その建議案は

        左の如し。


               長崎区に水道設置の議案

        要目並びに説明

           長崎は本邦五港の一つにして、しかもその地形、気候共に他の四港に譲らざる一勝地たり。しかるに近来、虎列拉痘瘡

          その外悪疫本邦並びに隣国の諸港に流行し、長崎はこれの発生の原地たりとの汚名を蒙るに到れり。

           これ甚だしき誣言にして、病源は印度その他南方の諸国なりといえども、本邦に於て発したるは長崎をもって嚆矢とするが

          故に、本邦人に対してはこの誣言を咎め能はざるなり。もとより本港は五港の一つにして、常に外国船の輻輳する所なるを

          もって、これらの病毒を輸入するもまた速やかなるは当然なりといえども、横濱神戸等も等しく開港地にして外国船の出入りは

          当港に勝るも決して劣らざる所なりしかり。而してその常に先づ長崎に発生し、他に伝播するについては必ずその媒介をなす

          者あるが故なり。

           この媒介者は一つにして足らず、区民の風俗習慣家屋の構造等かつて大いに力ある者なりといえども、その最も重なる者は

          飲水なり。本区の飲料水は倉田水と井水にして、倉田水は不潔なる田野より流出する水を()しもせず、そのまま木管等をもって 

          導きたる者なるが故に飲用適当とは期しがたく、井水は当春の検査によるに十中七八は飲用不適、残るニ三も多くは下等飲用水 

          にして、真に上等なる者は百中一ニに過ぎず、疫病の流行するも敢えてたのむに足らざるなり。

           また、元来長崎は井水に乏しく、この熱地において盛夏に街路灌水の設けなく、各人炎暑の苦を覚ゆること実に甚だしく、

          ために衛生上大いなる害をなし、かつ、商業にも幾分の妨害を免れ能わざるなり。また、火災に臨み消防夫等井水の乏しきに

          苦しみ、ために防ぎうべき者も遂に延焼に帰せしむること常なりと言う。 

           以上陳述したる如き本区の残欠を補うため、かつ、軽便なる水車をもって機械を運転し、市内の溝渠に清水を流通して時々

          これを洗浄し、小管をもって自家の泉水浴室等に清水を導く等の公便を得るために、日見峠旧道の傍らにおいて海面より凡そ

          直立百五十尺の所に地を選び、三ヶ月乃至六ヶ月の本区総需用高に対する水を貯蓄し得べき大水溜(みずため)を造り、これに同所近傍の

          山谷より流出する清水を導き集め、濾水盤を置いて更に清潔にし、鉄管をもって長崎区内に導き、蛍茶屋以北の街道は勿論、

          北は筑後町大黒町、南は浪ノ平古河町、西は沿海の諸町、北は新大工町爐粕町を限り、区内町々家々に等しく清水の便利を得せ

          しむるの目的をもって、ここに諸君の賛成を乞い、県知事閣下の特別なる補助を願うて一つの水道会社を起さんと欲するなり。

          即ち右企画の大略を記し、諸君の参考に供具す。

          一 水溜並びに濾水盤は港内満潮面より百五十尺の高さにあるをもって、市中何れの所に火災ありて、その家何程の高閣

            たりとも、噴水の勢力その屋上に達するに充分なり。

          一 水溜に誘集したる水は鉄管に通ずる前に濾水盤をもって充分に浄清するが故に、飲用はもちろんその他何らの用に 

            供するも妨げなし。

          一 水の流通は高さ百五十尺の圧力をもってするが故に、喞筒(しょくとう)器械等の要用なくために入費を減ずること莫大なり。

            これ本区地形の区民に最も幸いする所なり。現に横濱の如きは水道の興業費百五十万円を要し、なお足れりとせざる 

            趣なり。 

          一 水量は如何なる場合に於ても一人一日三十ガロン、我が四斗五升を下らざる予算なり。

          一 水溜は区内一般の需用三ヶ月乃至六ヶ月分を貯蓄し得べく、鉄管は一日一人三十ガロンまでのほかに、火災その他の公共用

            のため、なおその半額を余分に流通し得べき者たるべし。区内人口は仮に6万5千人と定む。

          一 長崎区水道興業費はおおよそ二十二万五千円とす。これは先頃来崎したる上海水道会社建築師長ハート氏の実地に付いて

            取調べたる予算による。

          一 長崎水道会社は区内人民一般の共有物とし、公選をもって名誉社長幹事を置いて事務を管理し、水道興業資金は県知事閣下の

             允許(いんきょ)を乞うて、県庁の保証ある50ヶ年期、年七歩利付社債証書を発行し、毎年抽籤法をもって三千円充て、負債高を

             減却す。

          一 水道会社維持について要用する年々の収入金は、

               元金利子            壱万五千七百五十円
               
               小頭一人・人足二人給料     六百円 

               社費書記・手代・小使給料    千円

               元金支払            三千円

                       合計金二万三百五十円 

          一 右金額を収入すべき目的は、

              ・船用水             千円

              ・特別自用水           千二百円

              ・諸官署・学校・会社用水     百円

              ・衛生用溝渠洗浄用水等・
               道路灌水・消防用水       三千円

              ・区内人口五万五百六十人に
               割合せ一人一ヶ年二十九銭
               七厘六毛の割をもって取立金   壱万五千五十円

                       合計金二万三百五十円

          一 前条予算は極めて低減したる者にして、船用水の如きは追々大いにその額を増し、衛生用・道路用・消防用も三千円には勝りて、

             地方費の支払を受け得べく、かつ、たとい右の如くなるも五十年の後には区民一同無代価の水を使用し、なお船用水・外国人用水・

             諸家・特別自用水・諸官署会社用水代等の収入ありて、他の公共事業を起こすべき資本金を得るに到るべし。 

               
                以上

           右水道会社設立の義は、本区に於て片時も差し置くべからざる肝要の事件と存じ候間、本会委員会において討議可決の上は総会に

          付し、区会の賛成を受け県知事閣下に出願の運びに到らせたく、この段請求仕り候なり。


             明治19年9月30日     
                         
                          商工会員  瓜生 震

                会頭  松田源五郎 殿




      【明治19年11月9日付け鎮西日報】

       ●水道会社設立請願書

         長崎商工会が会員瓜生震氏の建議により長崎水道会社設立を長崎県知事に請願すべきことに議決したる次第は、過日の紙上に掲げしが、

        その節副会頭只野氏の提出にて可決せし請願書案は左の如し。


                 水道会社設立請願書

          謹んで請願す。這般(しゃはん)本会会員瓜生震より本区に水道会社設立に係る建議を呈出せしにより、本会は本月一日これを臨時委員会に附せしに、

         その事業の盛かつ大なるをもって到底総会の審議に附すべきものと査定せしをもって、爾後総会開会の準備をなし、同月二十五日臨時総会を

         開きしに、本会に於てはつらつら考えるに、本区昨夏及び当夏二度の悪疫流行し、その勢い頗る猖獗(しょうけつ)にして悲愁惨怛(さんだつ)の態を現出せしも、その

         筋において検疫その当を得ると、莫大の官民費とをもってこれが防御とこれが消滅とに汲々(きゅうきゅう)せられたるをもって、目下ようやく愁眉を開くの

         秋に達せりといえども、伏してこれは斯くこの年悪疫流行に際しそれがため当港に被る損害は、実に数十百万円に達すべし。

          社会の不幸これより大なるはなし。かつこの年悪疫発生の原因は種々これありといえども、飲料水の不潔に因するをもって最も多しとするの説は、

         当時精覈(せいかく)なる調査上の与論たるは断乎として疑うべきに非ず。しかるに当区の倉田水及び井水たる試験上、上等に属するもの十中一、二に過ぎず、

         その他は下等あるいは下等にして下等、最も多きに居る悪疫の流行する亦宜なるかな。

          故に本会は、該建議をもって目下必須の事業なりと満場の賛成をもって、ここに本請願書を呈出するの評決を得たり然り。而して、会社の成立及び

         社債証書発行、社債消却の年限及び毎年元利金の償却等別紙の通りにこれあり候へども、社債証書の点に至りては特別なる御詮議をもって県庁の

         御保証を蒙りたく、さなきに於ては該社債所有者に於て自然は危疑を抱き候ようの恐れこれあり。また、これに対する年々の費額徴収上に於ても、

         一つの法律を御発布成しくだされたく、右は単に互いの契約をもって履行いたしがたき場合これあるのみならず、自然該社永遠の維持強固ならず。

         維持強固ならざるときはもとより社債償却を遂げる能わず、ついに該社の衰凋を来すや必然なることに御座候。その工事の如きは重大の事業にして、

         もとより該社の力をもって経営落成の程おぼつかなく候間、なにとぞ県庁に於て別紙中の興業費をもって工事終結の御計画成しくだされたく、即ち、

         御参考のため、本会会員瓜生震建議に係る議決案相添え、この段伏して願い仕り候。

         
                長崎商工会会頭代理

                    副会頭  只野藤五郎

                 月日

                   長崎県知事日下義雄 殿
         



      【明治19年11月12日付け鎮西日報】

       ●水道会社設立請願の副伸

         この程商工会副会頭只野藤五郎氏より金井区長へ提出されし長崎水道会社設立請願書は、昨日副伸書とも日下知事へ進達されたるよし。




      【明治19年12月19日付け鎮西日報】

       ●水道建議

         長崎商工会において水道設立の件に関し、去る十五日区会議事堂に集会して先に知事に差し出したる請願書と引き換え、さらに建議書を

         呈することに議決せりとは前々号の日報に記載せしが、その時同議会に提出して可決したる建議案は左の如し。


                       水道設置に係る建議案

           先に本会会員瓜生震より本区に完全なる水道設置に係る建議を提出せしをもって、本会は去る十月一日これを委員臨時会に

          附し候ところ、その事業の重大に属するをもって総会の審議に附すべきものと査定せしにより、爾後総会開会の準備をなし、

          同月二十五日及び本月十五日臨時総会を開きしに、該建議の旨趣を採用し、これを閣下に建議すべきに決定せり。

           謹んで(おもんみ)るに、長崎は本邦五港の一つにして、その地形気候ともに他の四港に譲らざる一勝地たり。

          しかるに近来、虎列拉痘瘡その他悪疫本邦並びに隣国の諸港に流行し、長崎はこれが発生の原地たりとの汚名を蒙るに到れり。

           これ甚だしき誣言にして、病源は印度その他南方の諸国なりといえども、本邦に於て発生したるは長崎をもって嚆矢とするが

          故に、本邦人に対してこの誣言を咎め能はざるなり。もとより本港は五港の一つにして、常に外国船の輻輳する所なるをもって、

          これらの病毒を輸入するもまた速やかなるは当然なりといえども、横濱神戸等も等しく開港地にして外国船の出入りは当港に

          勝るも決して劣らざる所なるにもかかわらず、その常に先づ長崎に発生し、他に伝播するについては必ずその媒介をなす者あるが

          故なり。

           この媒介者は一つにして足らず、区民の風俗習慣家屋の構造等かつて大いに力あるものなるべしといえども、飲料水の不潔に

          因するをもって最も多しとするの説は、当時精覈(せいかく)なる調査上の与論たるは断乎として疑うべきにあらずしかり。

          而して従来本区において飲用に供するは倉田水及び井水にして、倉田水は不潔なる田野より流出する水を直ちに木管等をもって
      
          導きたるものなるが故に飲用適当とは期し難く、井水は当春の検査によるに十中七八は飲用不適、残るニ三も多くは下等飲用水に
     
          して、真に上等なるものは百中一ニに過ぎず、悪疫の流行するも敢えてたのむに足らざるなり。

           しからば、すなわち、飲用水の改良は本区の一大緊要件にして、これが改良に着手するは今日の急務なれば、決して忽諸(こっしょ)に      

          附し去るべからざる事業なり。もとより飲用水改良は重大の事件にして、ために巨額の費途を要するは頃年不景気の余弊を蒙りたる

          本区のために忍び難き事情なきに非ずといえども、連年悪疫流行のために蒙る所の莫大なる損害に比すれば、また深く惜しむに足ら

          ざるなり。故に日見峠の傍らにおいて海面より凡そ直立百五十尺の所に貯水池を設け、これに同所近傍の山谷より流出する清水を導き

          集め、濾水盤を置きて更に清潔にし、鉄管をもって長崎区内に導き、蛍茶屋以北の街道は勿論、北は筑後町大黒町、南は浪ノ平古河町、

          西は沿海の諸町、北は新大工町炉粕町を限り、区内町々家々に等しく清水の便を与うるとを実行相成りたく、右に付き設置に関する方法、

          工事の測量、監督費用の徴収支出等に至るまで閣下の賢慮をもって至便の方法御設の上、本会の希望を遂げしむるの御計画を願い候儀

          には候えども、御参考のため別紙概略の意見書相添え、この段建議仕り候なり。





      【明治19年12月21日付け鎮西日報】

       ●水道建議(前号の続き)

                 水道設置に係る意見書
       

          一 水源は日見峠旧道の傍らにおいて海面より凡そ直立百五十尺の所に地を選び、三ヶ月乃至六ヶ月の本区総需用高に対する

            水を貯蓄し得べき大水溜(みずため)を造り、これに同所近傍の山谷より流出する清水を導き集め、

            濾水盤を置いて更に清潔にし、鉄管をもって長崎区内に導き、蛍茶屋以北の街道は勿論、北は筑後町大黒町、南は浪ノ平古河町、

            西は沿海の諸町、北は新大工町炉粕町を限り、区内町々家々に等しく清水の便利を得せしむるの目的なり。

          一 水溜並びに濾水盤は港内満潮面より百五十尺の高さにあるをもって、市中何れの所に火災あるも、その家何らに高閣たりとも、

            噴水の勢いその屋上に達するに充分なるべし。

          一 水溜に誘集したる水は鉄管に通ずる前に濾水盤をもって充分に浄清するが故に、飲用はもちろんその他何らの用に 

            供するも妨げなかるべし。

          一 水の流通は高さ百五十尺の圧力をもってするが故に、喞筒(しょくとう)器械等の要用なくために入費を減ずること莫大なり。

            これ本区地形の区民に最も幸いする所なり。現に横濱の如きは水道の興業費百五十万円を要し、なお足れりとせざる趣なり。 

          一 水量は如何なる場合に於ても一人百三十ガロン(我が七斗五升)を下らざるの予算をもってしたし。

          一 水溜は区内一般の需用三ヶ月乃至六ヶ月分を貯蓄し得べく、鉄管は一日一人三十ガロンづつのほかに、火災その他の公共用

            のため、なおその半額を余分に流通し得べきものたるべし。区内人口は仮に6万5千人と定む。

          一 長崎区水道興業費はおおよそ三十五万円とす。これは工学師の実地について取調べたる予算による。

          一 水道興業の後収入すべき金額の目的は、

              ・船用水             三千五百円

                 これは内外船舶へ賣込高1ヶ月平均九百九十噸、一噸に付き金三十八銭の割合にて、
                 一ヶ年分一万千八百八十噸、この代価四千百十四円四十銭となるを、かくのごとく 
                 予算したるものなり。

              ・特別自用水           二千四百六十五円

                 日本人 千二百十五円、戸数百五十戸に対する一ヶ年分 
                   但し、一戸十人、一人に付き一日十五ガロンを見積り、一ヶ月一戸四千五百ガロン、
                   千ガロンに付き十五銭の割をもってかくのごとし。  

                 外国人 千二百五十円 戸数五十戸に対する一ヶ年分
                   但し、一戸十人と見積り、一人一ヶ年二円五十銭の割をもってかくのごとし。

              ・諸官署・学校・会社用水     四百八十円

                 すべて三十二戸、一戸一ヶ年十五円の割をもってかくのごとし。 

              ・風呂屋用水           二百九十九円七十銭 

                 戸数三十七戸、一日の使用高九百ガロン、十ガロンに付き二銭五厘の割をもってかくのごとし。 
                   但し、風呂の大きさ 長さ六尺、幅四尺、水の深さ二尺のもの 一戸に付き二個並びに 
                   岡湯一個の見積りをもって一戸平均一ヶ年八円十銭となる。

              ・衛生用溝渠洗浄用水等・
               道路灌水・消防用水        三千円

              右の外、需用者一般より毎年幾千の水代を収入するの目的なり。 

           一 毎年雑費の予算 

               水源及び線路監督費    六百円 
               諸雇及び小使給料     六百円 
               修繕費          四百円 




      【明治20年1月11日付け鎮西日報】

       ●水道会社は如何

         客年長崎商工会員瓜生震氏の建議をもって同会より日下知事に建議せし長崎水道会社設立の件は、社債金(即資本)二十万円に対する

        年五歩利子の保証を政府に仰ぐの一事困難にして、知事に於ても建議を全採して区会等の意見を問うの運びに至らず、その間に少しく

        計画の趣を変じ、発起人十名を選びて政府に向かって水道会社資本借用の件を出願するの議に運び、既にその発起人は区長より指名

        されたる由なり。然るところ、指名を受けたる人々のうちには資本借用のことに関し意見を有する人もありとかにて、そのことも未だ整うに

        至らずと聞けり。 



      【明治22年8月16日付け鎮西日報】

       ●水道の授受 

          本日午前9時より左の議案に就いて市会を開かる。

                旧長崎区水道工事引継に係る諮問

         旧長崎区に於て設計の水道工事に関する事件は、さきに区会に於て議決の末実地に着手、既に鉄管の義も注文済にて着々計画の後

        多数人民のなお是を非とするものありて、一時事業遅緩に属し居りしに、引続き市政の施行に際し事務引継の秋に臨めり。

        故に元区長に於て目下差し支えなき分は工事見合置きし趣を以て今般右関係の書類ことごとく皆市参事会に引継ぎたり。

         本会に於ては素より重大の事件と認めるにより、しばらく書類を預かり置き、その授受の当否を市会の意見に付し、以てその

        針路に頼らんと欲す。

       ●中止の理由 

         是まで水道工事を中止し居りし理由は、右の議案中に躍々たり。即ち市制の施行に際したる故に中止したるものなり。

        左すれば政府に於て長崎区役所が事務引継の秋に臨み、矢張りドシドシと工事を急ぐは穏当ならずとて中止を内訓したりと

        言うが実正なりしことと知らる。

       ●元区役所の事務引継 

         元長崎区役所の事務引継は過日来市役所内にて取扱中なりしが、元長崎区にて設計の事業中もっとも重大なる水道一件の

        事務も去る十三日全く事務引継済となり、目下会計事務の引継中にて、一両日中にはことごとく決了の筈なるよし。



      【明治22年8月17日付け鎮西日報】

       ●水道の引継ぎ 

         前号の紙上に「元長崎区役所水道一件の事務も去る十三日引継ぎ済となりたり」と記し、又一方にて長崎市会が水道

        引継を受取るや否やの諮問のため先に開かれたる趣きを記せしを見し読者諸君は奇異の思ひを起されたることならんが、

        右は理由あることにて、本月十三日長崎市長が元長崎区長に対して土木課書籍目録の領受証を発するに当りて、但し

        水道関係事務は調査未済に付き、追って領受可致候と言ふ丈けの文字を誤脱したるより、右の如く十三日に引継ぎ済の

        姿になりしものなりとぞ。然るに一昨日の午後五六時頃とか市長より右誤脱の旨を元区長に照会ありしに因って、全く

        引継ぎ未済を判然するに至りたり。市民がアれ程に轟轟せし水道のことなれば、引継ぎを受くるにも念を入れて市会に

        諮問して後に取計らふと言ふ参事会の意見も然るべし。




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